重松清「疾走」

昨日書いていた、上司から借りてきた本。今日、読み終わった。
物語はある干拓地が舞台となる。父・母・兄・主人公の家族が「浜」と呼ばれる土地に住んでいた。この話は、ある人が語り部となる形で進んでいく。物語が進むにつれ、精神が粉々に壊れてついには放火犯になってしまう兄。兄が生甲斐だった母親は、ギャンブルにはまり借金だけが増えていく。強い人だと思っていた父親は、実はとても弱い人で何も言わずに蒸発してしまう。一人残された主人公は、兄の放火により学校では「赤犬」とされ虐げられていき、「ひとり」になっていく。15歳の少年が、ただ走っていく。
今回は、今まで読んできた重松清のダークな部分だけを集めた作品だと最後まで感じていたけれど、最後の最後で救われた。最後の警官に走りこんでいくシーン、後日談として、神父が語るシーン。
「ひとり」と「ひとり」がふたりになる。